ジュエリークラフト系の初投稿は友人の結婚指輪製作にしたいと思います.どちらかというと備忘録というかシンプルな日記になりますが,指輪,あるいはジュエリーの自作にご興味がおありの方は見ていってください.
(2020/3/31追記:自分たちの結婚指輪の製作記事も書きました.こちらはフルスクラッチとかではなく,お店で一緒に作るっていうやつです.興味があればこちらもご覧ください.)
デザイン
何はともあれデザインを決めなければ話が始まりません.要望を聞いてとりあえずCADでいくつか作りました.いくつか要望があったので,それが反映されているものと外側のデザインだけ反映させたものなどがごっちゃになってますが,クライアントとの間でデザインの相談ができればそれでいいのです.あ,勿論普通の依頼の場合はそんな事ではダメだと思いますが…
使用したCADはおなじみ?のAutodesk fusion360です.年間1000万以内の利益であれば商用利用でも大丈夫という太っ腹なライセンス条件だったと記憶しているので,今後指輪等の販売もできたらなあと模索していたりもします.
で,分割数のパターンを4パターンほど見てもらって,夫婦で話し合ってもらった結果,CADのレンダリングを見る限りでは24分割が一番良いという結果に.
試作
とりあえずデザインベースが固まったら次は試作です.
頂き物のForm1+で先程のデータを印刷します.単純に形だけ見たければどの樹脂を使っても特に問題はありませんが,今回は鋳造でパターンがちゃんと出るかどうかも確認したかったのもあって,キャスタブルレジンで印刷をしました.
今回使用したのはBluecastというメーカーのものです.
これはFormシリーズに代表されるような,レーザーをガルバノスキャナで走査する形の3Dプリンタ向けで,例えばPhotonやShuffleのようなUV-LCDで露光するタイプのプリンタでは使用できません.
PhotonやShuffleをお使いの方は,SK本舗さんからこちらを買うのが楽なうえに早く届くので良いのではないかと思います.
余談はこの辺にして,印刷されてきたものがこちら
で,とりあえずこれを友人に見せて,フィードバックをもらいます.
デザインの修正
24分割だと細かすぎる,というのがメインのフィードバック内容になります.
なので,12分割と16分割のものを製作,今度はシルバーで鋳造して,より本物に近い状態で見てもらいます.先ほどと同様に印刷をし,後処理してあげてから鋳造に持ち込みます.私は試作目的だったので,特に原型には手を付けませんでしたが,ここでの出来は鋳造の出来に直結しますので,印刷が甘い部分のディテールを修正したり,表面処理をするなりした方が,後の工程が楽になります.未処理で鋳造に出すとこんな感じ.余分なものも含まれていますが,個人用です.
デザインがほぼ固まったので,いざ本製作へ.
本製作
原型の製作
Form1+ではディテールが甘くなってしまったので,今回は素直に原型の印刷も外注しました.3Dayプリンターという業者に依頼しました.社名の通り3日で出荷してくれるのがありがたいです.
参考までに,指輪2つの印刷で,高精細アクリルでの印刷(積層ピッチ13μm)をお願いしてジャスト9000円(税抜き)でした.普段自分でプリントしている私からすると高いように感じなくもないですが,
- 機器の購入費用(Formシリーズよりも圧倒的に高価な機種)
- ランニングコスト
- 機器調整の手間
- 失敗のリスク
あたりを加味すれば,場合によっては選択肢たり得るのではないかと思います.
そして出来上がったのがこちら.
積層痕はあるにはありますが,かなりなめらかです.本当はこちらも鋳造依頼出す前に処理した方がいいのですが,アクリルだと割れの危険性もありますし,削りすぎちゃいそうで怖かったのでそのまま鋳造依頼しました.
鋳造(依頼)
鋳造は界隈では有名な井島貴金属精錬株式会社さんに依頼しました.
スケジュールがキツキツで,どうしても即日中にゴム型を作ってもらわないと色々間に合わなくなるということで,無理を言ってその日に間に合わせてもらいました.本当にありがとうございます.
ゴム型は液ゴムと焼きゴムの2種類があります.
指輪を作る際は収縮すると困るので液ゴム一択ではないでしょうか.キャスタブルレジンで作ればそもそも収縮の心配がないので,ワックスの形そのままに仕上がってくれます.
あと,ペンダントトップなどでサイズが多少変わっても問題ない場合でも,今回のアクリルのように熱に弱いものはそもそも焼きゴム作れません.気を付けましょう.
特に私のように納期ギリギリで焦るタイプの人は気を付けましょう.
今回は結婚指輪ということでプラチナでの鋳造です.Pt900(Ru2%)で鋳造しました.
貴金属について詳しく知りたい方はこちらが参考になると思います.
そして肝心の造形物がこちら.写真は片方のみですがちゃんと2つ作ってあります.
研磨
まずは湯口の処理をしなければなりません.SV925での鋳造時に限り湯口処理をオプションで行ってくれますが(有料),それ以外の場合は自分で削り取らなければなりません.
細かいところですし,削りすぎたら泣きを見るのでリューターでやる以外にないと思います.頑張りましょう.
削ったら全体の研磨に移ります.この際,原型をきっちり仕上げている人は仕上げ磨きのみで十分なのでしょうが,私の場合は積層痕の除去から始めなければなりません.
リューターを持っている人は何種類かバフと研磨剤を揃えれば,あとは様子を見つつ荒いものから順番に磨いていくのみです.地道な作業ですが,綺麗になっていくのを見るとテンションが上がっていくので,時間を忘れて没頭できます.
実は今回はフェルトバフしかもっていなかったので,それで何とか磨いていきましたが,磨く手順をまとめておきます.一回揃えてしまえばそこまで大きくは消耗しないと思いますし,手持ちのアクセサリーなどを磨く際にも同じ手順で行けます.
そして磨いたのがこちら.磨いてる途中だったのでまだ傷も多いのですが,それにしても写真撮るの下手か…
磨き前後を見比べてもらうとわかると思いますが,ディテールは一部崩れる可能性があります.実は依頼人からのフィードバックの一つに,角を丸めてほしいというものがあったので半分意図的にやってますが,角は普通にやると磨くにつれて落ちます.気にする方は注意しましょう.
終わりに
さて,これで今回の指輪製作手順は終わりになります.いかがでしたでしょうか.
ここまで上から順にお読み頂いた方は気づいたかもしれませんが,試作工程を省くのであればデザインはタダで済みます.そういった意味では気軽に始められるのではないかなあと思ったりもします.
いきなり友人の結婚指輪という大役を仰せつかるのはお勧めしませんが(プレッシャーが半端じゃなかった),CADを勉強したりしたい方も,具体的な目標がある方が早く楽しく学べると思うので.
興味のある方はぜひジュエリー製作を(も)始めてみましょう.ということで締めます.
余談ですが,私は彼女の要望により,結婚指輪はこちらで製作予定です.
“自作せえへんのかい”というツッコミが聞こえてくるような気もしますが,今一つ自作に足を踏み出せない方は,こういった体験教室などから始めてみるのも良いと思います.
それから,世の女の子は基本的にオンリーワンのものが欲しいというより,普通に良いものを欲しがるか,”思い出”を共有する方に重きを置く気がします.
プレゼント用に自作を検討されている男子諸君はオリジナルのを作るのも一興かと思いますが,こういうのに一緒に行く方が,”一緒に作る”という経験,思い出を残せるので良いですよ.
要は適材適所です!
では.
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