どらびです.
驚くべきことに2年も更新してませんでした.1年くらいのつもりだったのですが…
娘の誕生5日前に転職して,その職場も1年少し経って大分落ち着いてきましたので,趣味やブログ活動も少しずつ再開していければとは思っています.
とはいっても子育てという超重要かつ超重大なタスクが追加されたのでかなりの不定期更新になるのではないかと思っています.
さて,本題に移りますが復帰?1発目の記事は改造申請に必要な強度計算の第2段になります.
第1弾のアクセス,今でもちょこちょこあるくらいなので実は需要あるのかなと思っております.
今回はギアボックス周りの計算ということで前回よりもニッチな部分の改造の計算になります.必要な人は多くないかもしれませんが,もしかすると何かの参考になるかもしれませんし,何より自分の備忘録として役立つのでここに記録を残しておこうかと思います.
それでは,
歯車諸元について
まず,ギアボックスに利用した歯車の諸元が必要になります.購入元に確認し,必要なら材料などから硬さなどの情報を拾ってくる必要があります.
今回はかさ歯車を使用しており,その代表的な諸元は以下の通りです.
- モジュール:4
- JIS1
- 55~60HRC≒525HB
- 深部硬さ:270HB→Zw:1.11764706
- 歯数:20
- ねじれ角:35°
- 基準円直径:80
- 基準円錐角:45°
- 円錐距離:56.56854
- 歯幅:18
- 歯末のたけ:67.27208
- 歯元のたけ:3.4
- 歯たけ:4.152
- 歯先円直径:7.552
- 正面かみ合い率:84.80833
- 重なりかみ合い率:1.29312
- 精度:1.19274
- 許容ヘルツ応力:160 kgf/mm^2
計算上の条件と備考
一応先に,今回の計算上必要となる条件と,備考について記載しておきます.ただ,パッとこれを見て理解するのは難しいと思いますので,一旦飛ばして下の計算を読んでいき,意味が分からないところがあったらこちらに戻って確認する方が理解しやすいかもしれません.
- 領域定数:2.13072
- 材料定数係数:60.60368
- 噛み合い率係数:0.87939
- ねじれ角係数:1
- 寿命係数:2.5 (注:備考)
- 潤滑油粘度:50cst→潤滑油係数:0.95787
- 粗さ係数:1.03536
- 潤滑速度係数:0.98705
- 硬さ比係数:1
- 寸法係数:1
- 歯すじ荷重分布係数:1.0 (注:備考)
- 動荷重係数:1.1 (注:備考)
- 過負荷係数:1.25
- 信頼度係数:1 (注:備考)
- 歯形係数:2.45257
備考
- 周速度は外周部で6.45026m/s,等級はJIS1級で修整ありのため,動荷重係数は1.0と算出
- 歯筋荷重分布係数については,慣らし運転を行い,良好な歯当たりを確保できている状態で運用することを前提とし,その係数を1と定める.
- 信頼度係数について,は損傷確率が1%未満の場合を示しており,この場合の係数はJISにより1に定めてよいとされているため,ここでは1とする.
- 寿命係数について,「JISに基づく機械設計製図便覧:ISBN978-4-8445-2024-5」を参照し,ここでは2.5とした.
実際の計算例
やらなければならないことは基本的に前回紹介したスプロケットの応力計算と類似しています.歯車にかかる力を計算し,それが材料の許容値×安全率を下回っていることを確認することがミッションになります.
円周力の算出
今回計算するギアボックスは減速比1(要するに出力の方向だけ変えて,減速は一切していない)なので,ギアボックスにはドライブスプロケットにかかるトルクと同一の力がかかっています.
この時,想定トルクから算出されるかさ歯車の中央ピッチ上で円周方向にかかる力は,
$$F_{tm} = \frac{102 \times 19100 \times T}{975 \times d_0} = \frac{102 \times 19100 \times 49.72}{975 \times 67.3} = 1476.826 kgf$$
となります.
歯元曲げ応力から算出される中央ピッチ上の許容円周力
次に,ギア諸元から算出される許容労力を算出していきます.このギアボックスの許容円周力はギアの材質SCM415におけるブリネル硬さ代表値としてHB300を採用すると,許容歯元曲げ応力が$\sigma_{Flim} = 46kgf/mm^2$であることから,以下の様に計算できます.
$$F^{lim}_{tm} = 0.85 \cos \beta _m \sigma _{Flim} mb \frac{R_a – 0.5b}{R_a} \frac{1}{Y_F Y_\epsilon Y_\beta Y_C} (\frac{K_L K_FX}{K_M K_V K_O}) \frac{1}{K_R}$$
許容円周力と実際の円周力の比較
日本の車検の基準では,安全率が1.6以上になればOKです.安全率は,前回の計算でも何度も出てるので分かっているかもしれませんが,使用部品の力や応力の限界値が,実際にかかる力の1.6倍以上になるように部品選びや設計をしてください,ということです.ここで行っている計算はあくまで理想的なものですので,その限界値ギリギリで設計してしまうと何らかの拍子に壊れてしまうかもしれないから,余裕を持って設計してくださいということです.
自動車メーカーなどは大体この基準よりもはるかに厳しい基準で設計を行う場合がほとんどだと思います.
まとめ
改造申請のための計算例はひとまずこれにて終了です.例えばドライブシャフトを変更した場合などは,シャフトがねじ切れたりしないかを計算で求めたりします.いずれも大学で機械系を専攻したりすると,材料力学などで習った計算がそのまま登場してきます.
ただ,一部難しい話が出てくる(ヘルツの接触応力とか)ものの,実際の計算は理系であれば高校数学の範疇に収まると思います.
ただ,巷でよく言われている「三角関数って本当に必要なの?」というレベルになってくるとさすがに難しいと思います.
そんなわけで,三角関数はいろんなところで必要になるので一生懸命勉強しましょう.
今回はこの辺で.それでは.
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